32回、好きって言うよ。
「茉桜ー!遅刻するわよ」
お母さんの声に起こされ、ダラダラとベッドから出た。
制服に着替え、髪もとかす。
ポニーテールをしようと小花柄のシュシュを手に取って動きを止める。
……このシュシュ、していくの?
して行っていいの?
あの人が彼女なら、あたし、使っちゃダメなんじゃないの?
結局シュシュはつけられなくて、髪は下ろすことにした。
「学校……行きたくないな…」
いつもなら楽しみなのに。
翼先輩に会えるから楽しみなのに。
今日は会いたくない。
話したくない。
“あいつ彼女なんだ”って。
“だからもう付きまとわないで”って。
言われるのが怖くてたまらない。
わかってる。
翼先輩は、きっと言わない。
付きまとうな、なんて、優しいから言わない。
でも、でも。
翼先輩の綺麗な顔を見たら、泣いてしまいそうな気がして。
会いませんように、って願った。
こんな事を思ったのは、初めて。