32回、好きって言うよ。



「ねえっ」



昨日聞いたのと同じ可愛い声で、知らないうちに校門に来ていたことに気付く。



「あ……」



昨日の女の人だった。


抱き合った2人が脳裏に焼き付いて離れない。




……あたしに話しかけたの?


キョロキョロと辺りを見回すけど、あたし以外に人はいない。




「ちょっと話があるんだけど……いい?」




首を傾げた上目遣いは、女のあたしでもドキッとしちゃう可愛さだった。


断る言い訳も思いつかず、ついていく。



来たのは、学校の中庭にあるベンチ。


お昼ご飯を食べるのに一番人気のスポットだ。




「翼と……付き合ってるの?」



「…え?」



ワンテンポ遅れて聞き返した。

付き合ってるのはそっちじゃないの?



「あ、あたし翼の元カノの櫻庭百合(さくらばゆり)っていいます」




元カノ…?



「あ、如月茉桜です!」



なんて言っていいのかわからなくて、とりあえず自己紹介をした。


髪を揺らす風が蒸し暑い。




……元カノって、言ったよね。


今は付き合ってないってこと?




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