32回、好きって言うよ。
「茉桜、次理科室だよ」
「あ、うん!」
美紅と廊下に出て、少し先に見つけた翼先輩の背中。
「あ、…翼せんぱ……」
「早見くん!」
チャンスを逃さないように声を上げたのに、先に呼ばれてしまった翼先輩。
綺麗な3年の先輩と話してる。
少し視線を落とすと見える自分のつま先が涙でぼやける。
そうだよ。
元から翼先輩は、あたしには手の届かないような人だった。
ねえ、振り向いてください。
あたしに、気づいてください。
なんで……、何で届かないのかな…?