32回、好きって言うよ。
「茉桜、大丈夫…?」
放課後、ヘコんでいるあたしに美紅が聞く。
「もう……いいよ…」
あれだけ「好き」って言っても叶わなかったのが、そもそもの答えだったんだよ。
いくら好きって言ったって、翼先輩は応えてくれないんだよ。
「茉桜の想いはそんなものだったの?」
「だって…!」
「そんなにすぐ諦められるの?
早見先輩が他の人のものになっても、泣かないでいられる!?」
その言葉に、窓の外を見る。
雲一つない、青空。
「どこまで持ってくの」
プリントを持ってくれた翼先輩。
頭でリピートする“ツバサ”って曲。
恋に落ちた瞬間を、思い出した。
あたしの想いはそんなものじゃない。
そんなにすぐっていうか、一生諦められない。
翼先輩が他の人のものになるなんて、考えたくもない。
櫻庭さんがどれだけ翼先輩を好きか知らないけど。
翼先輩のファンがどれだけの想いを抱えているのか知らないけど。
あたしが1番、翼先輩のこと好きだもん……!