32回、好きって言うよ。
「もっ……もしもし!」
『あ、俺』
「は、はいっ」
『テンパりすぎ』
くくっと笑う翼先輩の声が、耳元で聞こえる。
あたし今、一番近くで大好きな人の声を独り占めしてる。
なんて贅沢なんだろう。
「あ、何か用事ですか?」
ハッと我に返った。
『んー……、何だろうね』
「え、あれ……?」
用があったわけじゃないの?
『なんか』
『話したかっただけ』
サラリと言う翼先輩に、あたしの顔は耳まで真っ赤になる。
こんな甘い言葉をもらえるなんて思ってもみなかった。