32回、好きって言うよ。
「あ、じゃあまたな。如月」
そう言って手を振る西原に、さっきの声を思い出す。
「西原、さっき何か言おうとした?」
すると西原は、なぜか寂しそうな、悲しそうな顔をした。
「何でもない。またな」
遠ざかる背中は、いつもの西原とは違うように見えて。
「西原……?」
さっき、何を言おうとしたのか。
悲しそうな表情の意味は何なのか。
あたしには全くわからなくて。
きっとそれは今思えば
翼先輩しか見えてなかったからだと思う。