32回、好きって言うよ。
「わ、もう夕方ですね」
夏だから日は長く、夕焼けが街を照らしていた。
道に伸びる2人の影。
「あれ、河合先輩たち……」
置いて行っちゃっていいんですか?と聞くと、
「いいよ。どうせ騒いでるだけだし」
って言うから、そうですか、と笑った。
「電車通だよね?」
そう聞かれて、ハイ、と答えた。
「そっか」
それだけ言って歩き出した翼先輩。
翼先輩も電車なのかな?
翼先輩が歩き始めたのは駅の方。
途中まででも一緒に行きたい。
でもさすがに図々しいかな?
ぐるぐる考えて動けずにいると、翼先輩が立ち止まって不思議そうに振り返る。
「帰らないの?」
その言葉に、パアッと明るくなっただろうあたしの顔。
走って翼先輩に追いついて、ニコッと笑った。