32回、好きって言うよ。



「悪いけど見たいドラマがあるから」



悪びれた様子もなく教室を出て行った美紅を睨む。


目の前には先ほど先生に渡されたプリント。



日直だった不運なあたしの課題。


クラスの名簿をつくらなきゃならない。


それぞれの名前を漢字も正しく書かなくてはいけないらしい。


…パソコンでも使ってやれよ。



シャーペンをクルクル回しながら、ため息を吐く。



…そもそも、まだクラス替えをしたばかりなわけで。


あたしは自分の名前と友達の名前くらいしか書けないわけで。


しかも漢字で、となると自分と美紅くらいしかわからない。



教室の後ろにある名前の書いてある表を見て、調べなくちゃいけない。




「あー、面倒くさい……」



ひとまず自分と美紅の欄だけ埋めて、席を立って後ろの表を見に行こうとすると。




< 5 / 320 >

この作品をシェア

pagetop