32回、好きって言うよ。
「悪いけど見たいドラマがあるから」
悪びれた様子もなく教室を出て行った美紅を睨む。
目の前には先ほど先生に渡されたプリント。
日直だった不運なあたしの課題。
クラスの名簿をつくらなきゃならない。
それぞれの名前を漢字も正しく書かなくてはいけないらしい。
…パソコンでも使ってやれよ。
シャーペンをクルクル回しながら、ため息を吐く。
…そもそも、まだクラス替えをしたばかりなわけで。
あたしは自分の名前と友達の名前くらいしか書けないわけで。
しかも漢字で、となると自分と美紅くらいしかわからない。
教室の後ろにある名前の書いてある表を見て、調べなくちゃいけない。
「あー、面倒くさい……」
ひとまず自分と美紅の欄だけ埋めて、席を立って後ろの表を見に行こうとすると。