再会の君に手を伸ばす
そして当日。
私の前に秋康くんはいた。
あの頃と変わらない……いや、数倍のオーラを纏って、まだ純真無垢な目で私を見る。
「先輩、ずっと会いたかった」
まるで、あの無人の部室に時が戻ったみたいだった。
ずるい。
そんな目で見られたら、あれから秋康くんの事を時折思い出して、思い出に浸っていた事まで見透かされているみたいだ。
久々にあった部員の皆も、全てを知っていたみたいに知らん顔。
懐かしい……瞳に揺れる。
あの頃じゃなく、一人の男性になった秋康くんに、好きな人の弟じゃなくなった彼に、手を伸ばした。
確かめたい。
今でも揺れるこの気持ち。
図々しいくせに、純粋で、迷いのないその手に抱かれたいと思ってしまったから。
【END】