GENERATION!!~双子座星の軌跡~1
…………………………………………

「ん~ 」

ヒナはゆっくりと目をあけた。
まどろむヒナの瞳に飛び込んできたのは真っ青な空と目映い太陽の光だった。
なぜかその映像がゆらゆらと揺れているように感じた。

~空が近い……ここはどこ?しかも、なんか不安定な地面………て!~

「お!やっと起きたかよ、バカヒナが。」

聞き慣れたこうの声にまどろみながらよく辺りを見回す。

そこは天の塔の長い、長い階段だった 。 空に面しているため、眩しい太陽の光や、清々しい風が通り過ぎていた。

ふと、自分の位置を確認しようと下をみたヒナは一瞬言葉を失う。

「…ちょ、ちょ、ちょこう、降ろせ~!! 」

絞り出すように叫んだヒナはなんとこうにおぶさっていたのだ。

ボカ!
容赦ない攻撃でヒナはこうから叩き降りた。

「いて、痛い、痛てぇ!
何すんだよ 運んでや ったのに 」

ブツブツ言いながら怒るこうを見て、ヒナはそれでも叫んだ。

「う、うっさい !」

ヒナはずんずん歩き出したが、もう頂上はすぐそこであることに気付いた。

~あいつ、私をおぶってここまで…?~

「…………お、重かった…?」

「いや?そんくらいどーってことねーよ。」
素っ気なく答えるこう。
「………そ。……」
気まずそうに下を向くヒナの耳に聞き慣れた声が飛び込んでくる


「ヒナ~!」

その時、空の下からジュンが奇妙な魔法陣に乗って飛んできた。

「すごっ! 」

「さっきの人達が消えちゃったから飛んできたのよ 」

ヒナ達の近くまで来るとジュンは魔法陣を杖に 変え、階段の端に降り立つ。

「??さっきのって 」

「おまえは、寝込んでたからな。…あいつらはなんだったんだろうな…」

しばし、地面を見下ろしたこうは、キッと向きを変えるとまた階段を上り始めた。

螺旋を描く階段を… まるで、螺旋のように、世界の運命に巻き込ま れていく自分たちのように……

[newpage]

ギィ……

荘厳な扉を開くと驚くことにその空間を囲む壁一面が空で囲まれていた。

側面全てが窓のようになっており、まるで空の上に浮いているかのように錯覚してしまう。

「すごいね!! 」

ヒナは珍しそうにそこらを走り回り、あちこち触りまくっ ていた。

「おい、はしゃぐな。ここに本当に宝珠って奴がいるのか? 」
「古い言い伝えではそう伝わっているわよ?
本当かどうかはわからないけど…」
ジュンも周りを注意深く見回していた。

ヒナは広い空間の一番奥に光をみつけ手をかざす。

「!? 」

光が弾け、両手で抱える程の光の珠が眩く輝きだした。

『誰じゃ。我の眠りを妨げる者は』

まさに天の上から聞こえるような威厳のある声であった。

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「だれ……? 」

3人は驚きの表情でそれを見ていた。
その両手で抱える程の光の珠から、静かに歩いて出てきたのは見たことのない程の美しさと、透明感、そして威厳を持った女性だった

キレイなウェーブのかかった薄紫色の長い髪。
薄い銀の流れるようなローブに見える同じく白い細い腕には丸い鏡のような物を装飾とした杖が握られている。
頭にはシャラシャラと軽やかな装飾が風に揺れる。
ヒナたちに気付いているのかいないのか、その瞳は無であり、存在自体も霞のようだ。
光る珠は、まだ、その場所で輝いていた 。

「誰だ? おまえ……」
遠慮なく宝珠をおまえ呼ばわりするこう。

しかし、こうに気付いた宝珠は急に顔色を変え 、鋭い視線を向ける。

『!!…おまえは…!! 』

宝珠が驚きの声をあげた瞬間…

「え……」

ビュ!!

こうの頬のすぐ横を風が通り過ぎた… その瞬間、後ろの窓が空が割れるように砕けた。
こうの頬は血がにじんでいた。

「な、なにすんだよ!! いきなり!! 」

こうは流れた血を無造作に腕で払い叫ぶ。

『人間は…なぜ裏切る…』


[newpage]


「え…」

その問いに戸惑うこう。向けられたことの無い 、悲しみと憎しみの入り混じった宝珠の表情。

間違いなくそれはこうに向けられたものだった 。今、始めて会ったばかりのはずのこうに…

身に覚えのない言葉がこうの感情に突き刺さる。

「人間は……なぜ裏切る…だと?」

〜なんだよ?オレは…こいつだって知らないのに……〜

冷たい汗が流れ、長い時が支配するような空間 。

こうは不思議な感覚に捕らわれていた…

〜裏切る…人間?…おれが?…〜

キーン…… 耳鳴りと共に何かがこうを包もうとしたその時

「こう?? 」

ヒナの声で我に返るこう。
「!!」

「危ない!! 」

バァン!!!

危機一髪、ジュンの魔法で守護幕が出現し、襲 いかかる宝珠の攻撃を防いだ。

「なっ!?」
「………」

宝珠の冷たい瞳がこうを見下ろす。

「…ってめぇ!宝珠だろ￿￿ 」

その瞳に屈せず、こうは立ち上がり、叫ぶ。

「宝珠って神とか女神みたいなもんだろ!? おまえ達は人間見守るもんじゃねーのか!? 」

『…………』

「世界もめちゃくちゃらしいし、おまえ達は何な んだよ!!」

荒々しい言葉に表情を変えず静かに、冷たく続ける宝珠。

『世界は…宝珠の配せぬ時に入ったのだ。 世界の迷走を我らはどうすることもできまい。 』

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