GENERATION!!~双子座星の軌跡~1

時の回廊

~体が動かない…

意識はある。

あそこで倒れてるのは私?~

ヒナは自分が空気となったような感覚を感じていた。
自分に戻ろうと意識を向けるが、その意志はまとまらず、まるで何かに捕らわれているかのように動かない。

朦朧とする意識の中ただ、ただ自分やジュン、宝珠を見下ろしていた。
ジュンが駆け寄ってヒナをゆすり起こそうとする

だが、ヒナは目を固く瞑り、指先ひとつさえもうごかさなかった。
まるで深い眠りに落ちているように。


〜ここはどこ?〜
ヒナの意識はそこで途切れ、また、
どこか違う場所をただよっていた。

淡い、琥珀色の光。
その光をまどろむように感じていた。


『…時の呪縛…。』

ジュンは宝珠の放つ言葉に驚き、思わず聞き返していた。

「時の……呪縛…?」

『解かぬば永劫目を開けることはない。』

「そんな…!!この子、見たところ魔法もない普通の子なんです!?
無理です!」

『ならば、永劫、呪縛からは逃れられぬ。』

「宝珠様!!」


ジュンの必死に自分を助けようとする声を聞きながら、ヒナはぼんやりとした感情に身を委ねていた。

〜私、一生このままってこと…?〜

〜ううん、解ける。〜

〜知ってるから。力…〜

~でも…!〜


『……闇を抱えるか。』

「え…?」

宝珠はジュンの腕に眠るヒナをじっと見下ろし、呟いた。


ヒナの意識はやがてまどろみから眠りにおちていく。
本人も気づかぬままに…

[newpage]


夕暮れのような、切ないような懐かしいような淡い光の中、子供たちが輪になっていた。

その真ん中。
泣きじゃくりうずくまる女の子がいる。
~あの子は…~
幼い頃の自分だった。


<どうして?どうして、みんな離れていくの?>

<私が変?変てなに?>


[あいつの手から光がでたんだってさ]

そこには幼き日のヒナがいた。
『泣き虫』と呼ばれていた小さい女の子がそこにいる。
ヒナの回りには同じくらいの男の子や、女の子が囲んではやしたてるように笑いあっていた。

<ちがうよ…私にもわかんない。それが光…力…?>


[本に向かって一人でしゃべってたんだって!]
[おばけだ!おばけのヒ……]

「おまえら!いいかげんにしろ!!」

〜え?〜

そこに割りいってきたのはよく見知っている顔の男の子だった。

[newpage]

青黒い髪を短く切り、まだあどけない顔立ちをしているが身間違うはずもない。
幼いこうだった。


<なんで、みんな行っちゃうの?>

幼いヒナは泣きじゃくりながら、現れた少年に驚いて逃げていく子供達を見て言った。


~…そっか。そうだったね、あいつ…~
ヒナの心になにかが生まれる。


「おまえもいちいちメソメソすんじゃねーよ!」

少年のこうは、ヒナに向けてそうぶっきらぼうに言ってちょこんと隣に座った。


まだまだ、小さい、悪ガキみたいなあいつ。
その光景を感じ、ヒナの心に生まれたちいさななにかは微笑んでいた。

「しょーがねーな。弱っちぃよ、おまえ。
そーだ!おまえが強くなるまで…」


<うん。>


その時、ヒナは目を上げた。

時の呪縛の中で、ヒナの心は動きだそうとしていた。


<…わかってるよ。>


<忘れてた。>


<だから、見てなさい!!>

「おまえが強くなるまで、ずっと見ててやるよ。」



<私はもう大丈夫!>




バリン!!

瞬間、割れるような音と共にまばゆい光が辺りを包んだ。
ヒナの心に生まれた光が宝珠にかけられた呪縛と共に四方に飛び散っていった。

「え…」

ジュンは驚き、目も眩しさ細めたまま動けずにいた。
なぜなら今まで自分の手のなかで横たわっていたヒナは白く輝く光を胸に、立ち上がっていたからだ。
ヒナは驚くジュンを笑顔で見やりながら、挑むような表情で宝珠を睨む。

「時の宝珠、リイム!!私に従いなさい!!」

[newpage]

「ん?」
その頃、こうは湖をどうしたものかと座り込み思案している最中であった。
時計塔に何かを感じ、一瞬見やる。
幼なじみの感からか、ヒナの気配を感じる。

「ま、あいつのことだから、そのうち、ひょっこり現れるか。」

そう呟くとまた、湖の淵に座り、考え込むようにして時を待つこうだった。







「ヒナちゃん復っ活〜!!」

そう叫んだヒナを宝珠は
微笑むように小さく息を吐くと、今までとは違った、穏やかな顔で見つめた。

「さて。私に従いなさい!!」

『なぜ、我を必要とする?』


見透かすような宝珠の瞳に臆することなく、ヒナは素直に立ち向かう。


「勘違いしないでね、私は私の目的のためにあなたの力が必要なだけ。
私の目的は、こうと元の生活に戻ること。
この世界のことは気が向いたら考える。」


『おもしろい。今までにない宝珠使いだな…』


聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の小さな声で呟くと、宝珠の手に一冊の本が現れる。

「あ~!!その本は…」

古びた分厚い鍵付きの本。
ヒナ達をこの世界に放り出した元凶のあの本に瓜二つであった。


『受け取りなさい。この鍵となるであろう書を…』


「うあっ!!」


本はずしりとヒナの肩を揺らす程重く感じた。
ついさっき、持った本とは別物であるかのように…

「あれ?宝珠は?」

本を受け取った瞬間、宝珠は跡形もなく消えていた…

「全く…何が起こったのかしら……って…!」

ジュンが現実の把握に混乱して頭に手を置いた瞬間だった

パタン…

ヒナはその場に倒れ込んでいた。
今まさに受け取った本を抱えて…
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