彼と彼女の場合
相沢さんも忙しいみたいだし、私も毎日夜までバイトだからまだお店以外では会ったことがないんだけど…。

でも私はそれだけでも十分だった。

相沢さんとお付き合いしてるってことだけで十分だし、向けてくれる笑顔が前よりもっと優しくなった気がするから。


いつもの席に案内する。

「本日のセットね」

「はい!」



帰り際――

「手、出して」

「え?あ、はい」

出した右手に紙が握らされた。

あ、あの時みたいだ…。

「ふふっ、あの時と同じだね」

相沢さんが優しく笑いながら言う。

「ほんとですね」

同じことを考えてくれていたのが嬉しい。

「それ、後で見てね」

そう言って会社に戻っていった。
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