彼と彼女の場合
――

トントン―――


「はい」

「浩汰です」

「どうぞ」



「仕事中にすみません」

「お前から来るなんて珍しいな。どうした?」

「仕事の話ではないのですがよろしいでしょうか?」
「ますます珍しいな。いいよ、なんでも言ってみろ」
「ありがとうございます。…父さん」


俺が来たのは社長室。

A CORPORATIONの社長に、親父に会いに来たんだ。


「フリーライターの東って男のことを調べてほしい」
「フリーライター?またどうして?」

「ん…。俺の…大切な人が何かに巻き込まれたかもしれないんだ…」

「ほう…。お前の大切な人、か」


さっきまでの威厳のある社長の顔とは打って変わって心底楽しそうな顔で俺をみる親父。


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