彼と彼女の場合
「こ、今度紹介するから!」

「楽しみだな。やっとお前も手に入れたいものを見つけたか」


親父は俺が小さい頃からずっと、本当に手に入れたいと思えるものができたときはどんな手を使ってでも手に入れろ!と言い聞かせてきた。


ずっと意味がわからなかったし、どんな手を使ってでも、なんて思うほどのものは今までなかった。

だけど最近やっと俺にもわかったよ。

彼女は、愛果だけは、どんな手を使ってでも手に入れたいと思った。

もしかすると親父もお袋にそう思っていたんだろうか?


まだ俺をニヤニヤと見ていた親父が急に表情を変えた。


「そのお嬢さんの名前も聞いていいか?」

「ああ。愛果。村野愛果だ」


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