彼と彼女の場合
「十分ぐらいで入れると思うよ」

リビングのソファーに座っていた彼女に後ろからそう声をかけると、ビクッと肩が跳ねた。


「あ、ありがとうございます!」


そのまま彼女の横を通り抜けて寝室のクローゼットからなるべく小さめの服を探してくる。



「これ着てね」


「あ、ありがとうございます」



お風呂の準備ができたことを知らせるメロディが流れて、二人してそれにビクッと反応してしまった。


「ははっ、入っておいで」

顔を見合わせてお互いに苦笑しながらそう彼女に伝えると、


「え?浩汰さん先にどうぞ!」


「いやいや、愛果先に入っておいでよ」


「そんな、浩汰さんのお家なんですから浩汰さんが先なんです!」


珍しくはっきりと主張する彼女に、いつまでも言い合ってても仕方ないか…と、俺が先に入ることにした。



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