彼と彼女の場合
洗面所のドアの音に続いて、パタパタと廊下を歩く彼女の小さな足音を聞いて、深呼吸を一度して自分を落ち着かせる。



――カチャッ……パタン―――


「…お風呂、ありがとうございました」


ドアから一向に近付いてこない気配に、振り返って思わず息を飲んだ。



…やっぱり凄い破壊力。
しかも想像以上。


俺は試されてるのか?

それとも、ここまで健全なお付き合いをしてきたご褒美か何かだろうか。


とりあえず、なんで彼女は一向にこっちにこないんだ?



「愛果?どうした?」


「…これ…落ちます…」


「え?落ちる?」


「ん…これ…」


彼女がこれ、と摘んでいるのは俺が渡して今彼女が着ているズボン…。


かなり大きかったようで何重にも裾を折ってある。




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