彼と彼女の場合
大丈夫、大丈夫…。



一度深く息を吐いてから、大きく吸い込む。



さすがに浩汰さんの顔は見れなくて、前を見つめたまま言った。





「浩汰さん、私を、抱いてくれませんか?」





「……いいよ」



しばらくの沈黙のあと聞こえた言葉に、自分で言い出したくせに身体が強ばるのがわかった。



「おいで」


浩汰さんに手をひかれて寝室へと連れて来られる。



手をつないだままベッドに腰掛けた浩汰さんにつられて私も座った。




「愛果」



そのまま浩汰さんに抱き寄せられた。


頭からいつの間にかお仕事モードが抜けてしまっていて、煩いくらいに心臓が音をたてている。




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