彼と彼女の場合
「すみません…家まで送ってもらって…」

彼女らを送り届ける車内で彼女は何度も俺に謝った。
そんなに謝らなくていいのに。

「思ったより弟さん元気そうでよかったね」

「いつもこうなんです。この子小さいころからよく熱出してて、慣れちゃったのか40度近くならないと気付かないほど元気なんですよね」

苦笑いしながら困ったように彼女が話してくれる。

「そんなに熱上がるの?それは心配だね」

「この子熱出すとよくひきつけ起こしてしまって…いつもちょっと風邪ひくだけでヒヤヒヤします」

そう言った彼女は本当に不安そうだった。

「こどもは夜になると熱あがるっていうもんね」

「そうなんですよ…今夜大丈夫かな…」

「でも夜にはご両親も帰ってくるんでしょ?」
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