彼と彼女の場合
あまりにも不安そうに話すから心配になってきてそう聞くと、彼女の顔が曇った。

どうした?

「お母さんは夜も仕事です…」

「そ、そうなんだ。お父さんは?」

「…うち、母子家庭なんです」

しまった…。

余計なことを聞いてしまった。

「そう…ごめんね」

「いえ…」

車内に気まずい空気が流れる…。


待てよ…。

ということは、今夜彼女が面倒を見るのか?

そんな、もしものことがあったら…。

そうか。

だからこんなに不安そうだったんだ。

当たり前だろう。

彼女だって16歳の普通の高校生なんだ。

「大丈夫?」

思わずそう聞いてしまってから後悔した。

彼女が大丈夫じゃない、なんて言うはずがないんだ…。

「大丈夫です!」

ほら…。

そんな無理して笑って…。
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