【番外編】惑溺 SS集
乱暴にベッドの上に押さえつけられた手首が痛い。
私の呼吸はますます荒く乱れる。
吸っても吸っても息苦しい、溺れていくような感覚に、眩暈がした。
さっきまでこの腕にきつく抱きしめてほしいと願っていたくせに、捻くれた私はとても素直にそう言えなくて。
「痛い、離して……」
気持ちとは反対に、彼を拒絶する言葉を吐きだす。
涙目で彼を睨みながらそう言うと、私を見下ろす黒い瞳が面白がるように細くなった。
楽しんでる。
身動きもできずに睨むしかできない私を見下ろして。
まるで狩りをする獣みたいに、絶対的な力の差を見せつけて獲物がどんな反応をするのか楽しんでる。
この無駄な抵抗がいつまで続くか観察するかのように、余裕の笑みで私を捉える憎らしい男。