【番外編】惑溺 SS集
リョウはそんな私の気持ちも見透かすように、ふくれっ面の私をクスクスと笑いながら、
「こんな時間まで起きてたんだ?」
と、小さく首を傾げて見下ろした。
別にあなたの事なんて待ってませんよ、とアピールするように膝の上にあった本を持ち上げてみせる。
「本の続きが気になって、眠れなくなっただけ」
「ふーん」
そんな私の言葉なんて、まったく信じてないんだろう。
私に背を向けてジャケットを脱ぐリョウの後姿。
その肩の揺れで小さく笑ってるのが伝わってくる。
「今日は遅かったね」
いつものようにリョウの部屋に泊まりに来た週末。
日付はもうとっくに変わり、すっかり日曜の明け方になっていた。