【番外編】惑溺 SS集
 
「素直になるまで離さない。どうしてほしいのか言えよ」

耳元で低く獣が唸る。鼓膜を震わす甘い誘惑。

「……離して」

お願い。
私をきつく抱き締めて、激しいキスをして。

そう素直に言えれば楽になるのに、私の中のくだらない理性と意地がそれを許さない。
すぐそこにある唇に触れたくて触れたくてたまらないのに。
私の口は、想いとは反対の言葉を吐きだす。

薄暗い部屋に響く自分の乱れた呼吸は、まるで喘いでいるみたいに聞こえた。

「……離して。キライ、リョウなんて」

喉から絞り出した自分の声。
その情けないくらい甘えた声色に、恥ずかしくて体が熱くなった。

「ダイキライ……」

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