【番外編】惑溺 SS集
金曜の夜、二十二時。
私はひとり、自分のアパートで明日からの旅行の準備をしていた。
旅行と言っても近場の温泉に一泊するだけの、毎年恒例の社員旅行なんだけど。
大きめのバックに着替えや化粧品なんかの荷物を入れていく。
たった一泊の温泉旅行に必要な物なんてたかが知れていて、あっという間に準備は終わり、時間を持て余して時計を見上げた。
二十二時、か……。リョウは今頃お店だろうな。
小さなバーをやっているリョウ。金曜日だから、お店はきっといつもより忙しいはず。
そんな事を思って、ため息をついた。