【番外編】惑溺 SS集
「俺は別に社員旅行に行くのが気に入らないんじゃなくて、ギリギリまで言わなかった事に腹立ってんだよ。せっかく俺が店休みにしたのに……」
「それ、どういう意味?」
「俺はこんな仕事してるから連休なんて滅多にないし。なかなか旅行も行けないし」
リョウはベッドの上で天井を仰いだまま、優しく私の髪に指を絡める。
「今回工事で珍しく店休みにするから、土日にぶつけてお前と休み合わせてどこか行こうかと思ったのに」
長い指で私の髪を弄びながら、うんざりした口調で言って私を睨む。
「ギリギリになって社員旅行って言われたら、誰だってムカつくだろ」
偉そうにそう言うリョウが愛しくて、思わず抱きついた。