【番外編】惑溺 SS集
地悪なリョウはいつもそうやって私に答えを教えてくれない。
教えてくれたっていいのに、リョウの意地悪。
カウンターに頬杖をつき、ふくれっ面でリョウを睨んでいると、
「はい」
カツン、と音をたてて目の前にグラスが置かれた。
丸みのあるタンブラーに入った淡い琥珀色のカクテル。
「あ、ありがとう」
『いつもの』と言うと、リョウが私のために作ってくれるカクテル。
コーヒーの香りのリキュールとミルクの優しい甘みの、淡い琥珀色のカクテル。
このカクテルを飲むと出会ったばかりの頃を思い出して、いつも少しだけ切ない気分になる。
ゆっくりと一口飲んで、
「美味しい」
吐息とともにそう言うと、それを見ていたリョウは優しく頷いた。