【番外編】惑溺 SS集
「んッ、こんなとこで……ダメ、お願い」
なんとかリョウから少し体を離し、上ずった声で懇願するようにそう言うと、私を見上げる黒い瞳が微かに細くなる。
リョウが優しく笑ったと思うと、こんどは左手で私の足を持ち上げ、柔らかいひざ裏を長い指でそっとなでた。
「あッ……!!」
感覚の狂った私には、そんな些細な刺激さえ身体を突き抜ける快感に変わる。
カウンターの上で、びくんと大きくのけぞった私の身体。
その身体を片手で支えながら、くすくすと喉を鳴らす意地悪な男。
「本当に嫌なら、もっと本気で嫌がれよ」
ひざ裏に這わせた左手に力を入れて、私の右足を持ち上げる。
黒い瞳は私の方にむけたまま、ゆっくりとリョウが持ち上げた私の右膝に唇を這わせる。
「やッ……」
彼の指先、唇の動きひとつひとつに、敏感に反応する私の身体。
それを楽しむように、黒い髪の間から私の事を観察する彼の視線。