【番外編】惑溺 SS集
 
「んん……ッ!」

膝から内腿へと、肌の上を滑ってゆく彼の舌。
ビクッと身体が痙攣するように震えた拍子に、カウンターの隅に置いてあったタンブラーが倒れた。

透明のグラスから、微かに残った琥珀色の液体が、とろりと流れ出す。
それと同時に、甘い魅惑的な香りが鼻腔をくすぐった。

リョウはそれを横目で見ると、ふっと短い息を吐きながら目もとだけで小さく笑った。
私の太腿から唇を離し、強引に私の身体を引き寄せる。

密着した身体と身体。
リョウの手がひざ裏から太腿、そしてその上へと移動していく。

「……由佳」

耳元でそう囁く優しい声。
反対に私の体を翻弄する意地悪な指。

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