【番外編】惑溺 SS集
 
……ああ、もう。

頭がおかしくなりそう。

指と唇だけで、こんなにも簡単に私の心も体もかき乱す。
憎たらしいくらい、私の身体を知り尽くした長い指。
ゆっくりと優しく私をかき回しながら、一番無防備な所を攻め立てる。

身体からどんどんはぎ取られていく理性。
内側からどんどんあふれ出てくる欲望。

私のすべてを指先だけでこんなにも狂わせる男が、不意に視線を私からカウンターの隅へと移動させた。
つられてリョウの視線の先を見ると、そこには魅惑的な甘い香りを漂わせる、カクテルの小さな水溜り。

リョウの指先の動きに反応して私が体を反らせるたびに、カウンターの上にこぼれた琥珀色の液体が、ゆらゆらと光を反射して揺れていた。


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