ソプラノ
「彩原さん!」
話しかけてた来たのは同じクラスの女子。あんまり話したことのない人だ。
「は、はい。」
あまりの勢いに思わず敬語になってしまった。
「彩原さん昨日の放課後、一ノ瀬君と一緒にいなかった?駅前のカラオケで見かけたんだけど、人違い?」
それは間違いなく鈴芽と奏夜だった。
「え!彩原さんって一ノ瀬君と仲良いの!?」
「一ノ瀬君の連絡先教えてよ!」
会話を聞いていたクラスの女子たちが鈴芽の元に押し寄せた。
「えっと、ひ、人違いじゃないかな…」
鈴芽は思わず嘘をついてしまった。
「えー、そうなの?絶対彩原さんだと思ったんだけどなー。」
「なんだー、勘違いだったのか。」
「一ノ瀬君に近づけるチャンスだと思ったのに。」
「でもさ、彩原さん一ノ瀬君と一緒に資料室の掃除してたよね?連絡先とか交換してないの?」
「うん、してない…ごめんね?」
連絡先を知らないのは嘘じゃなかった。
本当に知らなかった。
『連絡先も知らないのに、友達なんて言えるのかな?…言えない、よね。』
キーンコーン
予鈴が鳴り、女子たちは鈴芽の元から離れて行った。