ソプラノ
お昼休み、鈴芽たちは中庭でお弁当を食べていた。
「最近涼しくなったよね。外で食べるのが気持ち良い季節になってきた。」
「そうだねー、亜美暑いの苦手だから嬉しい!」
「部活もやりやすくなってきたしな。」
お昼はいつも3人で食べている。だいたい中庭か食堂。
たまに教室で他のグループと一緒になることがある。
「でもさ、鈴芽、朝は大変だったね。」
「まあ、一ノ瀬という存在は庶民クラスの私たちにとっては高嶺の花だからな。」
「そのことなんだけどさ、カラオケ、行ったんだよね…さっきは嘘ついちゃったけど、本当なんだよね。」
鈴芽の告白に2人は顔を見合わせて笑った。
「鈴芽、ごめん。嘘って分かってたよ。」
「分かりやすいからな、鈴芽は。」
「2人とも気づいてたの!?」
鈴芽は少しビックリしたように言った。
「あはは!でも、あそこで嘘ついたのは正解。」
「確かにな。バカ正直に答えてたら変な噂立ったかも知れないからな。」
「うん。一ノ瀬君に迷惑かけたくないから、隠したんだ。」
『多分、もう会わないだろうし、付き合ってるとか、そういう噂とかで迷惑をかけたくない。』
胸にズキンと痛みが走った。
泣きそうにもなったけど、鈴芽はグッとこらえた。