ソプラノ
「蓮、今日はありがとう。楽しかった!」
「俺こそ気晴らしになったわ。また遊ぼうぜ。」
「うん!また誘うね。」
「俺、このまま友達の家行くから送っていけないけど、大丈夫か?」
「平気だよ!ありがとう。蓮。」
「じゃ、また今度な。」
「うん、またね!」
駅前で手を振りながら二人は別れた。
ふと、近くにあったポスターに目をやると、それは昨日見たあのポスター。
時間は13:00〜16:00となっていた。
『4時までやってるんだ。』
場所は桜公園のコンサートホール。今いる場所からは結構近い距離だ。
『ちょっとだけ行ってみようかな。』
そう思うよりも先に鈴芽は駆け出していた。
15分後、鈴芽は桜公園に到着した。
「駐車場、たくさん車あったなー。みんなコンサート観に来てるのかな。」
公園内を歩きながら、独り言をつぶやく。
そうしている内にコンサートホールの前に辿り着いた。
「一ノ瀬君もここでピアノ弾いてるのかな。」
たくさんの観客の前で演奏している奏夜を想像すると、自分との差を嫌でも感じてしまう。
そろそろ帰ろうとした時だった。
「チュン子?」
鈴芽のことをそんな名前で呼ぶ人は一人しかいない。
振り返るとそこには奏夜がいた。