ソプラノ
「さて、話し合いも済んだことだし、帰るか。」
「そうだね、そろそろ先生たち見回りの時間だしね。」
「桜庭に見つかったらまた厄介なこと頼まれ兼ねないしな。」
扉を開け、校舎に入る。
「チュン子、お前荷物は?」
「教室だよ。一ノ瀬君もでしょ?」
「ああ。じゃあ、昇降口に集合な。」
奏夜の言っている意味が理解できず鈴芽はキョトンとした。
「なんだよ。一緒に帰んねーの?」
「え、でも一ノ瀬君とあたしは方向が逆だよ?」
「だから、駅まで送る。」
その一言で鈴芽の心臓の音は大きくなった。
「いいの?でも悪いよ…。」
「遠慮すんなよ。俺はお前ともっと喋りたいんだ。」
自分の顔をまっすぐ見つめ、ためらいもなく奏夜は言った。
鈴芽の鼓動はさらに大きくなっていった。
「何黙ってんだよ。突っ立ってないで行くぞ。」
「あ!待ってよ!」
『ドキドキする。』
鈴芽は自分の中に芽生えた感情じ気付き始めていた。