ソプラノ
「恋かな。って、恋でしょ!!!」
「…やっぱり、そうだよね…。」
「鈴芽が一ノ瀬奏夜に恋!
高校に入って初めての恋!
亜美は応援するぞ!」
「あたしだって応援するよ。
ただ、ライバルは多いだろうな。」
「確かに。貴族クラスの大半は一ノ瀬奏夜が目当てだろうからね。」
「前途多難だな。」
そう心配する2人に対して鈴芽は、
「2人とも待って!あたし、一ノ瀬君に恋してるけど、別に付き合おうとは思ってないよ!」
鈴芽の思いがけない一言に2人は目を丸くした。
「あたし、今のままで十分だよ。」
鈴芽は笑顔でそう言った。
そんな鈴芽を見て亜美は少し強い口調で、
「十分って、そんなわけないじゃん。
報われない恋なんて悲しいし、辛いだけじゃん。
鈴芽はそれで本当に幸せなの?」
と聞いた。
「確かに、報われないのは悲しいし、辛いよ。
でもね、一ノ瀬君にとって、あたしは、もう特別な存在だから。」
「特別って、どういうことだ?」
「昨日言われたんだ。
あたしは、特別だって。
だから、あたしはそれだけで十分幸せだよ!」
そう言い終わると、鈴芽は立ち上がった。
「あたし、次の授業の教科委員だから、先生のとこ行ってくる!」
と言って、校舎に入って行った。