潤いリップ
―――部室で。
「ごめんなさい!遅れました。」
「和架、早く始めよう?あんたの遅刻には慣れました(笑)」
「あはは……。」
もう、笑ってすませないよねー。日和の顔、笑ってないよ…。
「そうだ、和架。練習の後、時間ある?」
「え?……まあ、暇だけど。」
「連れていきたい場所あるから。」
「了解。」
連れていきたい場所?どこかな?
「はい、主役も来たことだし、練習始めます。15時には先生に演技指導してもらえる予定なので忘れずに。……それじゃあ、日和ちゃん、準備運動からお願いね。」
と部長の声の後、はい、と日和の声がする。
そして、準備運動の後、私たちのラスト公演でやる作品の練習が始まった。
主役をやる私。
そして、15時からの演技指導。
よく考えたら、これが私の生を大きく変えるきっかけになることは、まだ誰も知らない。