社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)



会ったと言っても卓土さんの婚約者さんと知った上で会ったのではなく、私が初めて飯田コーポレーションに行った時に偶然会っていたらしい。


確か名前は笹―…





―――ガチャ―





「来た!」





私は瞳子を抱っこしたままリビングを出て玄関に向かう。





「お帰りなさい。今日もお仕事お疲れ様です」





私に気付いた拓斗さんは目を細めると、あぁと呟いて大きな手で私の頭を撫でてくれた。


そして私の腕の中にいる瞳子のほっぺたを突くと、慣れた手つきで瞳子を抱き上げた。





「う〜!」

「瞳子もお帰りなさいって言ってます」

「ただいま。瞳子」





頭の天辺に唇をおとした拓斗さんの姿にドキッとしつつも少し嫉妬を覚える。



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