社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
拓斗さんが部屋から出てくる音と、リビングに向かって歩く音に耳を澄ます。
そしてガチャリとリビングに通じる扉が開く音と共に、
「拓斗さん!お誕生おめでとうございます」
そう言ってクラッカーの紐を引く‘フリ’をした。
クラッカーの紐を引かなかったのは、瞳子を驚かさない為で、それでも雰囲気だけはしたくフリをした。
「じゃじゃーん!」
効果音を口にしテーブルを見てもらうと、拓斗さんは料理と飾られた壁を見て目を細める。
「凄いな」
「一生懸命頑張りました。一年に一度の拓斗さんのお誕生日ですから!」
張り切らないわけがない!
なんたって自分の誕生日よりも今日の方が私は幸せな気分になれる。