社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)



拓斗さんが触れたのは髪先だけなのに、身体中が触れられてるような感覚に陥る。


ドキドキし過ぎて息がするのが苦しい。


どんどん近付いてくる拓斗さんの顔から逃れるように、顔をぐっと反らす。





「瞳子が近くに、います」

「だからなんだ?」

「こんな体勢見られたら恥ずか、んっ」





塞がれた私の唇。


離れたかと思えば角度を何度も変え、いつもとは何かが違う拓斗さんのキスに、ついさっき感じていた胸の痛みとはまた違う痛みに襲われる。





「やぁ、やだ、拓斗さん!」





いつもの拓斗さんじゃない。


こんなの変。





「やめっ、やめてください」





力いっぱい拓斗さんを押す。


――今の拓斗さんが怖い。



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