社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
そう言い私の腕を引っ張り胸へと引き寄せた拓斗さんの胸に頬を寄せ、私がじわじわと今までの状況を理解していく。
それでも、銃声の音や血だらけの拓斗さんがはっきりと焼き付いていて、なかなか震えが止まらない。
「余程悪い夢だったのか?」
「拓斗さんが悪人に撃たれました」
「そうか、俺が撃たれる夢を見たのか」
「そうです…。拓斗さんが、拓斗さんが」
思い出して泣き出す私は拓斗さんのシャツ握りしめるそんな私の背中を擦ってくれる拓斗さんはとても温かい。
夢で良かった…。
「拓斗さん…」
「ん?」
大きく息を吸って拓斗さんのにおいを嗅ぐと、大好きな落ち着く香りに胸がときめく。
「もっとぎゅーっとしてください。拓斗さんって存在をもっと感じたいです」
「あぁ」
拓斗さんはここにいる。
もう怖いことなんてないんだ。