社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
「ほんっとうに君は良い人だ。優子と結婚してくれて嬉しいよ。こんなに良い…、うぅ。君が息子になったんだと思うと」
「あーら、また泣いてる。お父さんったら最近また涙脆くなったのよ」
裾で涙を拭くお父さんにお母さんは呆れたようにそう言い放った。
そんな時、
「あー!」
瞳子が茶の間のテーブルに手をついて覚束ないつかまり立ちをした。
そんなつかまり立ちをした瞳子に皆の視線が集まるのはもはや必然的で、
「瞳子ちゃん早いわ。まだ9ヶ月にもないのに。ねえ、お父さん」
「そうだなぁ。優子は遅くて母さんと心配になったりしたんだ。そんな優子が今や立派な母親だなんて…」
「またはじまった。さて、お父さんが自分の世界に入っている内に料理でもしようかな」
「それなら私も手伝う」
瞳子の事よろしくお願いしますと拓斗さんに言い、私はお母さんと客間を出てキッチンへと向かう。
「良い感じじゃない」
腕捲りをしていた私にお母さんは嬉しそうにそう言ってきて、突然の良い感じ発言に首を傾げる。
「飯田さんと優子。何だかんだ言って仲良さそうだし幸せにしてもらってるのね」
「何だかんだは要らないくらい仲良しだと私は思ってるよ?」
「ノロケちゃって。じゃ、お母さんがメイン作るから優子はサラダとか作って」