社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
大丈夫ですと返事をするとガチャリと扉が開き拓斗さんの顔が見えて、私は凄くドキドキしていた。
振り袖姿の私に拓斗さんはどんな反応をしてくれるんだろう?
なんでもいいの。
どんな言葉でもいいから拓斗さんの言葉が欲しい。
拓斗さんは扉を閉めてから視線を私に向けると少し目を見開いた。
「――」
「――」
「――」
けど目を見開いただけで拓斗さんは一言も発してくれなくて、そんな拓斗さんに私もお母さんも無言になってしまう。
シーンとする部屋。
そんな空間から逃げるように。
「あとは若い者同士で。お邪魔虫は退散するから、ねっ」
お見合いで使いそうな言葉を何故か棒読みで言ったお母さんは部屋から出ていってしまった。