社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)



少しだけシートを倒してくれた拓斗さんにキュンとしながらも妊娠中を思い出していた。


瞳子がまだお腹にいた時もどうすれば私が楽になれるかって、私以上に拓斗さんが考えてくれたんだよね。


ふふっ、拓斗さんはずっと優しい人だ。





「どうした?」





いきなり笑った私を拓斗さんは不思議そうに見つめてくる。





「拓斗さんは優しいなって思ってただけです」

「優しいか?」

「はい。とっても」

「それは間違いだ。俺は優しくなんてない」





――えっ。





「優子は今俺が考えてる事が分かるか?」

「分からないです」

「綺麗になった優子を誰にも見せたくない。人目が多い成人式に連れていきたくないと思ってる。俺だけがこの姿を」



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