社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
「瞳子にピアノ習ってもらわなきゃですね」
「いい」
「でも」
「瞳子が自分からしたいと言うまで何も言わなくていい。それに母さんだって使わない事も考えただろうし、瞳子の為といいつつも結局は自己満足だ」
もし使わなかったらこのグランドピアノはどうなるの?なんて事を拓斗さんに言ったって返ってくる言葉は想像がつく。
それでもグランドピアノは安くはない。
金額の事を考えたらどうしても使う事ばかりを考えてしまって…、ピアノだって使ってもらった方が嬉しいに決まってる。
「でもこの部屋とっても素敵ですね。日当たりが良いし。お庭が見る事が出来ます」
「近くで見てみるか?」
「はい」
頷いた私に拓斗さんは優しく頭を撫でてくれると、レースのカーテンを開けた。