社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
「母さんは…」
「あら、拓斗は考えてくれよとでもいいつもりね?勿論考えたわよ。考えた結果に辿り着いたのよ?もし瞳子ちゃんが弾かないなら私が瞳子ちゃんに弾くわ」
グランドピアノについて少し言い合いを始めた拓斗さんとお義母さん。
その姿は当然親子そのもので、拓斗さんが若く見えた。
「すまないね。二人とも頑固で」
そんな姿を見てお義父さんは申し訳なさそうに眉を下げたけど、腕の中の瞳子がお義父さんの指で遊びはじめると、その眉は逆の理由で目尻と共に下がって。
そんなお義父さんに私は頭を横に振った。
「嬉しいです。拓斗さんもお義母さんも瞳子の事を思ってくれてて…、あと親子っぽい姿も見る事が出来て。瞳子のお誕生日の筈が私がプレゼントを頂いたみたいに思えたり」