社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
ベビーカーを動かして路肩に停まっている車へと戻っていく串田さんに、ふと男の人を見ればもうベンチ大分離れた場所にいて、どんどん遠ざかっていく。
謝りたい。
串田さんが勘違いしてあんな事を言った事を。
でも――、足が動こうとしない。
串田さんの方にも男の人の方にも、ただただベンチの前で瞳子を抱いたまま立っている私。
そんな自分が嫌になって、その嫌な気持ちから涙が出そうになる事がより厭気が膨らむ。
そんな私の気持ちが伝わったのか、それともお腹が空いたのか将又オムツをかえてほしくなったのか、寝ていたはずの瞳子が起きた途端にグスグスぐずりだした。
「ふぇぇぇ」
「大丈夫だよ…、ね?」
「奥様?」
瞳子の泣き声を聞いてこっちへと戻ってきた串田さん。