社長の旦那と恋い焦がれの妻(わたし)
話してる途中で急に腕を引っ張られ、私はぎゅっと拓斗さんに抱き締められていた。
「拓斗さん…?」
「駄目に決まってるだろ…。そんな事聞いたら二度と妊娠させたくない。例え優子が望んでいたとしても」
もう一度、駄目だと言った拓斗さんは更に私を抱き締める腕に力をいれた。
「あのね、拓斗さん。最後まで聞いてください」
「駄目だ。聞きたくない」
まだ続く言葉があったのに、拓斗さんが駄目だと言うなら言えないじゃないですか…
言いませんと私は拓斗さんの背中に腕を回した。
「ふふふ」
「何を笑ってるんだ?」
「拓斗さんから小麦粉の匂いがします」
「そりゃあ、作ってたから当然だろ?」
確かにそうだけれど。
「餃子作りながら話す内容ではなかったな」
「そうですね。でもいつかはしないといけない会話です」
「あぁ。まあ、当分はないが」