海の城 空の扉
「だが、最後に一つだけ――姫君はこの国の内情をご存知か?」


一瞬、鋭く輝く目。

人好きのする容姿に騙されそうになったが、この人は案外切れ者かもしれないとラドリーンは思った。


「ほとんど知りません。エイローンという人が、王の代わりに国を治めていると司教様が教えて下さいましたが」


『そんな事だと思った』とか『あいつは何を考えているのだ』とか、アルフレッド卿がブツブツ呟く。


「あの……御領主殿?」


「よろしい!」

いきなりの大きな声に、ラドリーンはビクッとした。

「よろしければ、この国の欠片をお見せしよう」


「勝手な事をされては困ります!」

<侍女>が、珍しく慌てたように言った。


「テオの事なら気にするな。どうだ、姫君?」


知りたい――ラドリーンは頷いた。


「決まりだ!」


アルフレッド卿が、ラドリーンの肘に手を添えて歩き出す。


「お……お待ち下さいっ!」

<侍女>が二人の後を追って来た。

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