海の城 空の扉
2
階下は酷い有り様だった。
扉や家具の残骸が散らばり、壁と床には至るところに血飛沫の跡があった。
戦いの最中にぶちまけたのだろう。アルコールの臭いが鼻をついた。それに混じって血の臭いも。
男達は死体を隅に寄せ、怪我人の手当てを始めていた。
「血を踏むな。滑るぞ」
アスタリスはそう言ってラドリーンの肘に手をやった。
下を見ると、足元にどす黒い血だまりがある。何かぐちゃぐちゃしたモノが混じっていたが、確かめる間もなく、ラドリーンはアスタリスの脇に引き寄せられた。
「マスタフ」
アスタリスが声をかけると、怪我人の傷を確かめていた騎士が振り向いた。
「バード? いつ来たんだ?」
「お前が二人蹴倒して、三人目を斬ったあたりかな」
「結構前だな」
「二階から落ちて来たリナムを受け止めるのに忙しかったんでね」
――バードが手を出さなくても、オイラ、自分でちゃんと着地できたんだよ
リナムが不満そうに言ったが、二人は気にも留めない。
「裏切りか?」
アスタリスの言葉に、マスタフは首を横に振った。
扉や家具の残骸が散らばり、壁と床には至るところに血飛沫の跡があった。
戦いの最中にぶちまけたのだろう。アルコールの臭いが鼻をついた。それに混じって血の臭いも。
男達は死体を隅に寄せ、怪我人の手当てを始めていた。
「血を踏むな。滑るぞ」
アスタリスはそう言ってラドリーンの肘に手をやった。
下を見ると、足元にどす黒い血だまりがある。何かぐちゃぐちゃしたモノが混じっていたが、確かめる間もなく、ラドリーンはアスタリスの脇に引き寄せられた。
「マスタフ」
アスタリスが声をかけると、怪我人の傷を確かめていた騎士が振り向いた。
「バード? いつ来たんだ?」
「お前が二人蹴倒して、三人目を斬ったあたりかな」
「結構前だな」
「二階から落ちて来たリナムを受け止めるのに忙しかったんでね」
――バードが手を出さなくても、オイラ、自分でちゃんと着地できたんだよ
リナムが不満そうに言ったが、二人は気にも留めない。
「裏切りか?」
アスタリスの言葉に、マスタフは首を横に振った。