海の城 空の扉
城の外に出ると、アルフレッド卿はアスタリスの方をチラリと見た。

「ここにはせいぜい百人の騎士しかおりません」

「そうか」アスタリスは頷いた。「確かにそれは少ないな。だが、見ろ」

アスタリスが真っ直ぐ指差した先には、城下に広がる街があった。

もう真夜中のはずだったが、驚いた事に、家々に灯りがともっている。
それは天の星々よりも明るく、きらめいて見えた。

「これは……」

アルフレッド卿が呟いた。

夜風に乗って歌が聞こえてくる。

その声は、街に近づくと共にどんどん大きくなっていった。


――船を出せ


割れ鐘のようにしゃがれた声だ。


『船を出せ

 網を引け

 板切れ一枚 その下は

 金波銀波のお宝の山』


家々の前に男達が立っていた。

誰もが厳つい顔で真っ直ぐに立ち、長い銛を体の横に立てるように持っている。

騎士達が通り過ぎると、男達は歌いながら列の後ろについた。


『船を漕げ

 銛を刺せ

 板切れ一枚 その下は

 深く暗い死の顋(あぎと)』
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