海の城 空の扉
歌声と共に列はどんどん膨らんでいった。

若者も、老人も、男という男が全て集まって来たようだった。


『船を漕げ

 明日をも知れぬ命なら

 セー ホレ

 力合わせて船を漕げ』


誰もが知っている歌なのだろう。
街の門に着く頃には、騎士達も一緒に歌っていた。

壊れて、門の向こうが見える門扉の前で、番人の男がアルフレッド卿に頭を下げた。


「どのような状況だ?」

アルフレッド卿は番人に尋ねた。


「敵はそう多くはございません。松明の数から推し測って、五百人部隊かと」

「十分多いではないか。いや――」アルフレッド卿は後ろを振り返り、頭を振った。「そうでもないか……」


ラドリーンは不思議に思いながら、遠くで揺らぐ松明の炎を見つめた。

もちろん戦いの場など知らない。

だが、それにしても静か過ぎないだろうか。


「静かだな」

テオドロスが同じ感想を口にした。

「最初はもっと近くから、投石機と火矢で攻撃がありました。それが急に止まりまして。気のせいか松明の炎も少し後退した気がします」

「どういう事だ?」

「さあ‥‥わたくしめにはさっぱり」

門番は汗をかきかき答えるのだった。


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