海の城 空の扉
アルフレッド卿は迷わずエーンバルに近づき、普通の馬にするようにその首を撫でた。

「神馬よ、力を貸してくれ」

魔法の馬は頷くように頭を下げた。


「お前は行かぬのか?」

アスタリスは、アルフレッド卿に付き従う騎士達を顎で示すようにしてマスタフに尋ねた。

「門を守る奴も必要だろう?」

マスタフがそう言うと、アスタリスは意味ありげに眉を上げた。

「嫌な男だな」マスタフは苦笑した。「エーンバルは苦手なんだよ。朝日と共に水に還る馬なんて信用できるか」

「なるほど」

「いちいち含みがあるような言い方をするなよ」

「そんなつもりはないが? 思い当たる事があるから、そう感じるのだろう」

「言ってくれるね」マスタフは笑った後に、ふいに真顔になった。「バード、さっきの話なんだが」

「ん?」

「お前に頼まれていた件だよ」

「ああ。やはりユニコーンは見つからなかったのか?」

「そうだ。この地のユニコーンは絶滅したようだ」

「そうか。いくら呼び寄せても影さえ見えないはずだ」アスタリスはどこか遠い目で言った。「この荒れ果てた地では無理もないか」

「言いにくいが……それだけじゃない」

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